【壱誕生のストーリー】
当店は、昔ながらの製法で「脱脂加工大豆」と呼ばれるフレーク状の原料を仕込み、木桶で発酵・熟成させて醤油をつくってきました。
このように原料から仕込みをおこない、自社で発酵熟成させて醤油をつくる蔵元は今では全国的にも希少な存在となっています。
しかし近年、設備の老朽化や後継者不足、食生活の変化などの影響から、醤油の蔵元は年々減少の一途をたどっています。
六代目である私も家業を継いで以来、米沢市内の醤油屋が廃業していく現状を目の当たりにしました。
それは、醤油を一からつくることのできる職人が減っているという、危機的な状況でもあります。
日本の食卓に欠かせない醤油。その伝統技術が失われてしまうことは決してあってはならない。
そう強く感じた私は、この製法を守り、次の世代へと繋いでいく責任を自覚しました。
そこで新たに挑戦したのが、大豆をそのまま仕込む「丸大豆醤油」づくりです。
木桶や室(むろ)、圧搾機といった設備も揃っているのだから、この伝統技術を後世に残していくためにも、挑戦しない理由はありませんでした。
とはいえ、当店はそれまで丸大豆仕込みの経験がなく、手探りからのスタートでした。
先代の父と何度も話し合い、蔵元仲間に教えを請い、専門書を読みあさり、ようやく仕込みにこぎつけたのが2021年の冬でした。
初めての丸大豆醤油は、これまでの醤油とは発酵の具合がまったく異なり、まるで小さな赤子を育てているような感覚でした。
二年間大切に育てた諸味を搾り、味わったときの感動は今でも鮮明に覚えています。
父と二人三脚で苦労を重ねて完成させたこの醤油に、「壱(いち)」という名をつけました。
これまでで“いちばん”の醤油ができたこと、そして父・壱啓(かずひろ)への尊敬の念を込めての命名です。
以来、毎年一樽だけを仕込み、より良い「壱醤油」を目指して伝統技術が色あせることのないように取り組んでいます。
これこそが私の使命であり、生涯をかけて続けていくべき仕事だと感じています。
【壱への想い】
醤油の醸し(かもし)という技術を継承し、次世代につなげていきたい。
そんな想いで造ったのが、この“壱”という醤油。
かつて先人たちがおこなってきた丸大豆での仕込み。
そして無駄なものを加えず素材を活かす無添加での製法に挑戦した渾身の逸品です。
毎年より良い“壱”を仕込み、さらに磨きをかけた“壱”を創造するプロジェクトに挑戦します。
【壱の特徴】
一.米沢で唯一の丸大豆木桶仕込み醤油
全国でも木桶仕込み醤油の流通量は全体の1%以下。醤油を造るうえで重要な工程であり、
蔵人の心得とされる「麹」「櫂」「火入れ」。すべて六代目の手で製造管理。
二.無添加丸大豆醤油「壱」の由来
五代目「壱啓(かずひろ)」と六代目「良輔」が、親子二人三脚で試行錯誤を重ね、
二年の時を経てようやく完成した醤油。
当店史上、今までで“いち”ばんの醤油ができたこと。そして五代目「壱啓」への尊敬の念を込め、
名前の一文字をとり「壱」と命名。








